さるきちのしっぽ

おサルのおつむでゆる~くお話ししますので、よろしければお付き合いください。

154 物を壊す…破壊する…血が騒ぎます…。

 みなさん、こんにちは。

 

 今日は久しぶりに解体作業です。

 実は密かに燃えてます。解体って、毎日やれ!って言われると、え~!ってなっちゃうくらい過酷な作業なので、解体業に従事している方には心から敬意を表したいところですが、たまにやるのは精神衛生上すこぶる良いのです。物を壊す…破壊する…血が騒ぎます…。まぁ、素人に毛が生えた程度の人間がやる解体作業なんて言うのは、本格的なものなわけがなく、単に店舗の内壁や間仕切り壁を取っ払っちゃう作業です。あと、クロスを剥がしたり、鏡を外したりもします。

 知り合いの店舗屋さんの依頼ですることになったのですが、車で2時間くらいかかる遠方なので、早朝からの出陣となりました。件の店舗屋さんが迎えにきてくれて、8時半ごろに現地に横着し、床や通路を養生して作業開始です。

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 バールを手に対象の壁をしばし物色し、軽く一撃!ズゴッと食い込むバール!高まる私の胸の鼓動!いけないいけないと思いながら次々に繰り出すバールの打撃により、ボコボコ穴だらけになる壁、いやぁ、たまりませんねぇ。

 店舗にせよ住宅にせよ、内壁や間仕切り壁は石膏ボードを使用していることが多く、今日の現場も軽量鉄骨の柱にそれが張られていました。この石膏ボードっていうのは燃えにくく、形状が変化しにくい(湿ったり断熱材が押すと見事に変形しますけど)特徴があり、カットしやすいので重宝します。しかし木材と決定的に違うデメリットとして「もろい」んですよね。バールっていうのは釘抜きも兼ねた道具で、まぁ、解体の時は金槌と同じように使いますが、簡単に穴が開きます。まぁ、それがいいんですけど…。

 バールで穴を開けると、その穴に指を入れ一気に引きはがします。うまくいかない時はペキッと情けない音がして、小っちゃい破片しか取れませんが、何かの拍子にバキバキバキッと大きく剥がせる時があります。気持ちいい~!…ハッ、もちろん効率もいいんですよ。別に変な趣向だけで作業しているわけでは…ないと思っているはずの予定なんですが…。

 まぁ、いいでしょう。

 とにかく、大きく取れると気持ちいいし効率的なんです!

 で、手前のボードが外れると、柱があり、向う側のボードが見えます。あ、この壁は間仕切り壁で、柱を挟むようにボードが張ってあるんです。一方のボードを外されて、まさに無防備な内側を露呈してしまった向う側のボードに対して、私はもう自分自身を制御することができなくなっていました。本来ならドンと押すだけで外れそうな向う側のボードに対して、あろうことか必殺の右拳にエネルギー充填を始めていたのです。

 人間はストレスに弱く、どこかで発散しなければなりません。屈託を抱えたままでは心は傷つくばかりです。特に最近はプリプリしてばっかりでしたし…。ん?「何を言い出すかと思えば」と思っていませんか?これは大切なことなんですよ!あなたは子供の頃の砂遊びで、隣の子が見事な城を作り上げたのを見て、壊してやったことはありませんか?私はあります!高校生の頃、隣で見事な絵を描き上げているのを見て、トマトジュースをかけてやりたい衝動にかられたことはありませんか?私はあります!まぁ、しなかったけど…。ん?なんかちょっと違いますね。まぁ、いいんです!人間の心の中には邪悪な破壊神が宿っているものなのです。それを理性で抑え込んでこそ、成熟した大人と言えるのです。ハァハァ…まぁ、いいんですけど。

 とにかく、久方ぶりに私の中の破壊神を開放するチャンスが訪れたわけで、これを見逃す手はありません。

 十分にエネルギーを蓄えた私の右拳は、日頃のストレスを払拭し、サディスティックな願望を満たすべく(やっぱり!)、うなりをあげて向かい側の壁に突きこまれていきました。無論のこと、空手をちょっとだけかじっている私です、大きく振りかぶるような無粋なマネはしません。脇に抱え込んだ拳をわずか30㎝程度前に繰り出すだけです。しかし、その時きっちりと肩から肘、そして手首へとひねりを加えていたこともお伝えしておかなければなりません。まぁ、これが後に大きな災いとなってしまうんですが。私の拳は見事にボードを突き抜けていました。(まぁ、ボードのもろさを知っている人からすれば、だから何?って感じでしょうが)「フッ、やっちまったな!」めまいを覚えるほどの快感に包まれた私は、その直後、右肩にかつて経験したことのないような激痛を感じました。つい「グッ、ガッ」とうめくような声を上げてしまい、右腕をボードに突っ込んだまま動けない私を尻目に、2mくらい離れたところで黙々と作業をしている店舗屋さん。

 絶対こちらの異変に気が付いているはずなのに!

 先ほどまでの高揚感が絶望感に変わってしまい、右腕については戦力外通告を受けたにもかかわらず、その時の私は店舗屋さんへの対抗心で燃え上がっていました。普通「ん?どうしたの?どっか痛めた?」くらい聞きそうなものじゃないですか!それを何も知らないような顔で作業を進めるとは、いったいどういう神経をしているんでしょう。かくなる上は、私にだってミジンコくらいの意地があります!絶対こっちからは言ってやらないもんね!ということで、本来の30%程度の力しか発揮できなくなった右腕をかばいながら、プリプリと作業を続けたのでした。結局プリプリしてる…。

 

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 ボードを取り去った後は軽量鉄骨をバラして、後の作業は残す壁のクロスはがしになります。鏡は店舗屋さんが外しちゃいました。

 ビニールクロスは壁と天井などの境目にカッターで切り込みを入れておき、カッターの先を滑り込ませひねると簡単に捲れます。それをつまんで引きはがすと、これまた大きく引きはがせることがあります。先ほどのボードの時ほどではないのですが、これもまた、剥がしたクロスの大きさに比例して健全な(暴力的でないから)快感に包まれます。またもや自分を見失いそうになりますが、右肩の痛みが私の心をかろうじて平静な状態に引き戻してくれました。…何のことやら、ですね。

 あと1mくらいの幅を剥がしきってしまえば終了となるところで、新たな問題が発生しました。…剥がれないんです。クロスがまるで下地と一体化したようで、端っこをつまんでも千切れるばかりでどうにもなりません。あと少しなのに~!

 仕方がないので、カッターの刃をクロスと下地の間に差し込みジョリジョリしながら剥がしました。ちょっとまってください、こっこれは「スキ引き」です!魚の鱗を取る時に、鱗取りでこそぎ取るのではなく、包丁で薄皮を残してスキ取ってしまう技法です。まさか解体作業でスキ引きをするハメになろうとは思いませんでしたが、これはこれでなんだか板前さんになったような気分になれますので、結構楽しめました。

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 無事作業が終了した後、心地よい疲労感と、まだ残っている右肩の痛み、そして激しい起伏に見舞われて崩壊寸前の私の心が絶妙に混ざり合い、何とも言えない放心状態になっちゃいました。

 解体作業っていうのは埃をかぶり、ケガの危険があり(今回の私)、とても疲れます。でも、建築において避けては通れない重要な作業でもあります。

 ですから、とりあえず避けられないのだけはやるんだけど、後はきちんと避けていこうと、右肩をさすりながら改めて心に誓う私なのでした。

 ストレス発散は、やっぱり別の方法ですることにします…。