さるきちのしっぽ

おサルのおつむでゆる~くお話ししますので、よろしければお付き合いください。

㉓今回もバイクのお話をしたいと思います。

 みなさん、こんにちは。

 

 前回、XLR250というバイクに乗っていたお話をしました。

 そこで、今回もバイクのお話をしたいと思います。

 と言ってもメカニカルなお話やテクニックのお話をするつもりはありません。まぁ、したくってもできませんし。それよりも、全身を外気に晒して走るこの乗り物の魅力をお伝えしたいと思っています。そういえば、最近は自転車のほうが流行っているようで、チャリダーたちをよく見かけます。あのピチピチした衣装を身にまとう勇気はありませんが、風を切って走る気持ち良さや、疲労による恍惚とした満足感については理解できます。ただ、たまに見かけますが、車とは明らかに速度差があるのに車道の中央付近を走るのは邪魔なのでやめていただきたいものです。

 

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 私はこれまで4台のバイクに乗りました。ハスラー50、XLR250、ZZ-R400、XR230です。このうち、ZZ-Rを除く3台が所謂オフロードバイクになります。たぶん、スピードよりも走る場所を選ばない感じが好きなんでしょう。…実際はほとんど舗装された道路しか走りませんが。

 中でもXLR250は一番長い期間を共にしたバイクで、非常に思い入れがありました。

 学生の頃から乗り始めて、就職してからも通勤に使っていました。

 7年くらい乗っていて走行距離は12万kmを超えていたと思います。

 前回のお話でも触れたように、キック始動と足つきの悪さがネックでしたが、慣れてくるとそれが当たり前のようになりました。エンジンは扱いやすいし、足回りはとても安定感がありましたので、走るのがとても楽しくて仕方がない状態でした。さらに、貧乏学生だった私にとって、40㎞/Lを超える燃費は大変ありがたいものでした。

 そんなXLR250と過ごす中で、心が弾むのが田舎道や山道をゆる~く走る時でした。

 ある秋の日曜日だったと思います。土地勘のないところをトロトロ走っていたら、夏祭りのお神輿の集団と鉢合わせしてしまいました。祭りの、それもお神輿の邪魔をするなんて無粋なことはしませんので、バイクを降りて脇に寄せました。すると、すでにデキ上がって上機嫌のおじさんやおばさんからかまぼこや漬物やおにぎりのおもてなしを受けてしまいました。さすがにお酒は断りましたが、こんなこともあるんですねぇ。ただ、そのまま半ば拉致されて、お神輿を奉納した後、盆踊りみたいな踊りまで一緒にさせられるとは思いませんでした。なんとなく、嫌と言えなくって…。

 

 XLR250には長く乗りましたが、その間転倒したのは2回だけでした。その前に乗っていたハスラー50の時のほうがはるかに多くコケています。どうしてなのかと言えば、それはずばり安全運転だからです。

 基本的にスピードは控えめですし、車間距離は取ります(ノロノロ車はさっさと抜いてしまいます)。車の脇をすり抜けることもしませんし、信号を合図に隣の車とスタートダッシュを競うこともしません。気分良く乗りたいだけなので。

 そんな私ですから、2回の転倒は、それはひどいものでした。

 1回目は道路が凍っているのに気が付かず転倒した件です。ある夜、信号が青になったので、脇道から片側2車線の道に侵入したとき後輪が左右に滑り、しまいにはロデオ状態になって転倒。しかもそのまま人馬(あ、馬はバイクのこと)共に滑る滑る。けがはありませんでしたが、信号待ちの車にお乗りの皆さんには私の勇ましいカウボーイっぷりをさぞかしご堪能いただけたことと存じます。バイクを起こす時にもう1回滑ってオチを付けたところで無事退場いたしました。

 2回目は冬の日中、片側2車線の広い道路の交差点で追突した件です。何か歌をうたっていました(よくうたいます)。信号が青から黄に変わった時、前の車が交差点に進入したので、私も行っちゃえ~と思ったのが間違いでした。前の車は交差点内で停止。私も慌てて急ブレーキ。しかし、間に合うはずもなく追突。XLR250はオフロードバイクなので、ロードバイクよりタイヤの径は大きくなっています。その前輪が前のワゴン車のバンパーにあたり後ろに跳ねます。私は、というとロケット発射状態ですね。頭からワゴン車のリアハッチに激突しました。ぶつかる瞬間は覚えていませんが、ぶつかってから地面にたたきつけられるまではよく覚えています。たぶん無意識に体を右にひねったのでしょう。視界が対向車線からその脇のガソリンスタンド、さらに遥遠くの山々、そして空、と実にゆっくりと移り変わっていきました。実際は1~2秒のことだったのでしょうが、今も数十秒かかったような気がしてなりません。記憶の書き換えでしょうか?自分しか知らない自分が見た風景をセリフ付きで編集しなおした上で、スロー再生しているのですから念の入ったことですよね。

 地面にたたきつけられたといっても、貧乏学生だった私は寒さに対応するため上は7枚、下は3枚くらい着込んでいましたので、特別痛くありませんでした。車のリアハッチにヘルメット形の丸い窪みをつけた頭部も首も問題ありませんでした。ガソリンスタンドのほうがザワザワしていたようですが、私がすぐに立ってバイクを起こそうとしていたので、安心したのでしょう。その後は静かになりました。

 前の車に乗っていたおじさんは一応「大丈夫か」と聞いてくれました。しかしなぜ交差点の中で停止していたのかと聞くと、急に態度を変えて怒り始めたので面倒くさくなり、車(後で会社の商用車とわかりました)の修理代として6万円払うことで示談にしました。友人やバイク屋のおじさんからは、「警察を呼ぼうとすれば、たぶんそのおじさんは何もなかったことにしようとしたはず」と私の対応を批判されました。でも、その時は恥ずかしいやら、パニックになっていたやら、バイクが気になるやら、おじさんが面倒くさいやらで、さっさとその場を離れたかったので、まぁそれで良かったと思っています。6万円は友人から借金して翌月バイトしまくって返しました。

 私はというと、衝突した時ハンドルを持っていた右手が痛むので、病院に行ったら先生から「君、骨太いねぇ」との診断が下りました。バイクのほうはフロントフォークが歪んだのをバイク屋のおじさんが蹴って直してくれました。このお医者さんとバイク屋のおじさんについて当時は少しだけ「ムウ…」となりましたが、今ではそんなものだろうと思っています。要するにたいしたことはなかったということです。

 

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 あれっ、バイクの楽しさをお話するはずが、転倒話になってしまいました。

 でも、こういうことって印象に残りますし、よく考えたら運が良かったっていう話ですよね。一つ間違えば、そこで人生終了していたかもしれないのですから。

 バイクに乗るということは、全身を使ってこの不安定な乗り物を制御し乗りこなす、ということです。バイクを運転しながら煙草を吸ったりしません(たまにスクーターに乗りながら吸っている人がいますが)、飲食もしません、というか普通出来ません。まぁ、歌はうたいますが…。

 バイクを運転するために体の機能のほとんどを費やします。でも風を感じ、暑さや寒さも感じます。空気の匂いも感じます。聞こえてくるのはほとんどエンジン音ですが、場所によってその聞こえ方は変わります。これらの感覚とともに、刻々と移り変わる景色は単なる視覚的なものではなく、より直接的な肌触りで頭の中にすり込まれていきます。たとえ法定速度を守って走っていても、なんだかとけていくような感覚になる時があります。体をさらけ出して走るということはリスクもありますが、全身で風を纏ったような心地よい感覚を得られる行為なのです。

 なんかうまく言えませんが、とても気持ち良いのです。

 

 現在、バイクはその販売台数を減らしつつあり、メーカーからも次々と生産中止になるモデルが発表されています。これらは別に狂ったバイク乗り(スピード超過、騒音、危険行為等々)のせいでイメージが悪くなったからとは考えていません。まぁ、狂ったバイク乗りの方々は迷惑なので退場していただきたいと思っていますけどね。問題は価値観の変化であって、今の生活様式の中で魅力を感じる方が減ったからだと思っています。バイクに乗りながらスマホは扱えませんし。

 でも、マイナー好き(アマノジャク、へそ曲がりとも言います…)な私にとっては別に何ともありません。むしろ望むところなのです。そうやってマイナーな趣味を持つ者同士が林道や海岸沿いのワインディングですれ違う時、とっさに、でも自然に挙手や会釈を通して瞬間的な共感を得られた時に、ささやかな満足に包まれるのです。

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 今、バイクを降りて数年経っていますが、なんだかまた乗りたくなってきました。

 でも、釣りもしなければなりませんし。いっそのことバイクで釣りに…、荷物が乗らないですね。でも、アウトドア遊びなら…七輪が乗らない。

 全く、困ったものです。