みなさん、こんにちは。
人が倒れる音って嫌なものですね。
あ、いや、別に大変なことにはなっていません。その人もその後歩いて行ったし。
でも、いきなりバサッ!ですから。一体何がおきたのかと、久しぶりにびっくりして冷や汗が出ました。
いつもの鉄アレイウォーキング中のことでした。
コース全体の3/5くらい歩いてくると国道の信号に引っ掛かります。これもいつものことです。正確に計ったわけではありませんが、気分的には5分くらい待たされているような気がします。国道は東西に走っていて、私は南から北に向かって横断するところでした。この信号があるところはちょっと大きめの交差点で、南北に走る県道も同じくらいの道幅で、国道同様に両サイドに歩道が完備されています。
この日も交差点にさしかかったところで信号が赤になっちゃいました。
フぁ~、引っ掛かっちゃった~とがっかりしていると、後ろでバサッと音がしたので、すぐ振り返ったら、人がうつ伏せで倒れていた、というか地面にバウンドしていました。ふぇっ!って言っちゃったと思います。びっくりしたので。その人は南北に走る県道の横断歩道を東から私の立っている西の方へ走ってきたんでしょう。わたり切ったところで舵を南にきり、私に背を向けるように走り去る予定だったと思いますが、どうやら向きを変えたところで転んじゃったようです。装いはジョギングのそれでしたし、肩のあたりにチカチカ光るライトを装着していたようで、倒れている間中点滅していたので、すぐ横で信号待ちをしていた車の運転手さんたちも注目していました。
おそらく女性だと思います。その人はすぐに起き上がりませんでした。
まっまずいのか?と思い2~3歩み寄ろうとしたところ、両腕の肘があがり、腕立て伏せの伏せ状態になりました。それでも2秒くらい動かないので、また2~3歩近づいたら、スッと上体を起こして、しゃがんだ状態になりました。それを見て、問題なさそうだと判断し、私は元の位置に戻りました。信号は2回目の赤になっていました。
ウヘッとなりましたが、さっきの人が気になったので、振り返って見てみると、どうやら膝を打ったようで少し歩いたところで前屈状態になり、左の膝のあたりを触っていました。鉄アレイを持った人間がまじまじと見ているのは、あまり良い絵ではないと思ったので、それ以来そっちを見ませんでした。
それにしても見事な倒れっぷりでした。ここ数年、あれほど迫力のある転倒にはお目にかかったことがありませんでした。バウンドの感じからして、きちんと助走まで加わっていたのが想像できます。転倒した時に縁石やガードパイプの柱にぶつかることもなかったのは幸運だったと思いますが、倒れてすぐに起き上がらなかったところに、私は尋常ではないものを感じていました。「只者ではないな…」というのが、信号が青に変わって横断歩道を歩いている時の私の呟きです。
転倒してしまった時、そこが道路で車にひかれる恐れがあったり、何者かに追われていたり(?)する場合はすぐに起き上がる必要があります。しかし、そうではない場合はまず手足の指先が動くかどうか、つまり神経の断絶はないかどうか確かめた上で、上体の方から負傷具合を確認していく。彼女がすぐに動かなかったのも、腕立て伏せの伏せの状態でまた止まったのもそういう事だったのでしょう。
「どこの忍びだろう?」…思えば私もバカですよね。
でも、本当にそう思っちゃうくらいその人の動作は理に適ったものでした。
なかなかの手練れと言わざるを得ません。
そもそも、転倒する際に、明るいところであれば前転するという手もあります。
荷物もなく、軽快にジョギングできる装備でしたので彼女ほどの老練な忍びであればわけもないことです。しかし、あえてそれをしなかったところに、忍びとしての神髄を見たような気がします。暗い場所で安易に回転技を使えば思わぬところで負傷することがあります。幸い彼女は肩にライトを点けていましたし、瞬間的に自分が倒れ込む場所に危険なものがないことを確認したのでしょう。
「甲賀か?それとも伊賀者なのか?」相変わらずその時の私の中で、彼女は忍びのままでした。…はい、バカでした。
ただ、うつ伏せに倒れこむのは本当に理に適っているんですよ。私も野球部にいましたので、守備の時に横っ飛びで捕球したことが何度もあります。あ、一応内野手でした。そのときローリングなどできるものではありません。それに転倒の際まず第一に守るべきなのは頭部です。ですから両腕を前に投げ出す体制は頭部(顔も)をきちんとガードできます。次に重要なのが腰です。柔道の投げ技は背中を畳にたたきつけますよね。あれをもろに食らうと息ができなくなるそうですし、受け身を取り損ねて腰を痛打すると建てなくなっちゃいます。うつ伏せでの倒れ込みは、倒れ込む場所に危険なものがなければ思いの他安全なのです。フフン!
じゃあ、なんですっ転んじゃったの?って言われると、・・・さっ、さぁ、どうしてでしょう?あっあれです、薄暗いところでは小さな段差を見落としがちになるじゃないですか。横断歩道と歩道の境界には歩車道ブロックがあり3~5㎝くらいの段差がありました。たったぶん、それに引っ掛かっちゃったんじゃないかと思います。この日は雨は降っていないので、マンホールが牙をむいたとは考えにくいですし。
実際20㎝くらいの段差より3~5㎝くらいの段差の方が躓きやすいんですよ。ですから、エクステリアの設計の際、そういう小さな段差はできるだけ排除しようとします。コレ本当です。それに、交差点で信号や街灯や建物や看板の明かりが、あと車のライトがいろんな角度からあたるので、影が不自然で把握できなかったんじゃないかと…。
いやいや、ちょっと待ってください。
彼女が忍びであったことを忘れていました。うんうん。
おそらく、彼女は忍びの掟に背き、忍びの里から追われる身であったのではないでしょうか。そこで追っ手がいるのに気が付き、咄嗟にすっ転んだふりをしたのではないでしょうか。人知れず抹殺したい追っ手は、思いっきりすっ転んで注目された彼女を襲うわけにはいきません。いかに武器が食塩水を凍らせた手裏剣や吹き矢であってもです。うむうむ、筋は通ってますね。
すぐに起き上がらなかったのも、その後膝を気にするようなしぐさをしてすぐにその場を離れなかったのも、強敵の気配が消えるのを待っていたのではないでしょうか?
こうして考えるとすべてつじつまが合いますね。
「今の時代に忍びなどいるわけないじゃないか!」とお考えのあなた!認識が甘い、甘すぎますぞっ!!だいたい、私は忍びです!なんてかっこうで歩いていたら、それこそ忍び失格です。忍びが今も存在している証拠もありませんが、存在していない証拠もないではありませんか。
う~ん、そうすると、私は図らずも忍びの暗闘を垣間見たことになりますね。
いやぁ、恐ろしいものです。
しかし、これだから鉄アレイウォーキングはやめられないんですよね。