みなさん、こんにちは。
コロナの影響で不要不急の外出を控えましょうという空気の中、みなさん例年に比べてお家で過ごす時間が多くなっていませんか?すると家の痛みや不具合が目に付いたり、増築や改築について検討されている方もあるかもしれません。もっとも、前者のほうが断然多いでしょうし、なかには夏休みを利用して子供さんとDIYに勤しんだ(駆り出されて酷使された)親御さんもいらしたことでしょう。
その影響だと思いますが、我が町でもホームセンターが結構賑わっています。
いつもより長く家にいることもあって、生活必需品の需要も増えたことは想像できますが、建築資材や工具のコーナーにもファミリーでお越しのお客さんが増えました。普段は建築関係の業者や職人が妙に渋い顔で佇んでいるスペースになのですが、こうして親子連れの方々がお見えになると雰囲気が変わって見えるから不思議です。
海外でも同じように、この機会に自分の力で建物のメンテナンスをやっちゃおうという人が多いようです。
はいはい、どんどんやっちゃってください。その際、建物は時間の経過とともに必ず変化(劣化)するということを実感していただけることを願っております。
なぜ、こんなことを言うのかというと、最近建物に対する人々(お客さん)の認識が変化しているように思うからです。
今日はちょっと真面目なお話をしますね。
私は長年リフォームやエクステリアの仕事をしていましたが、一時期建物のメンテナンスも併せてやっておりました。その時に思わず耳を疑うような相談(クレームとはあえて言いませんけど)を受けたものです。
例えば、この外壁塗装は汚れません、と聞いていたのに汚れた。さらに、この壁紙(ビニールクロス)は一生ものだと言われたのに、10年で表面がポロポロ剥がれてきた。もっと言うと、電球が切れたので交換に来い。とどめは子供が壁や床を汚したから奇麗にして欲しい。…すごいでしょ。でもご本人は大真面目だったりします。
こういうことが起きるのは、言うまでもなく住宅メーカーや建設会社の営業担当、現場監督に原因があります。これは間違いありません。売りたい一心でポジティブな事柄に尾鰭背鰭さらには胸鰭までつけてほとんどウソのようなことを平気で言いますし、逆にネガティブな事柄は触れないようにするかごまかします。試しに「御社のアフターサービスの取り組みと、クレームの事例を具体的に教えてください」と聞いてみてください。怪しい業者は何ら具体的な話をせず、資料も提示せず、曖昧な説明に終始します。
でも今日申し上げたいのはこのことではありません。この様な業者は今も昔も一定数存在していると思います。むしろ現在のほうがその悪質さは低くなっているような気がします。というより、確信犯的な悪人は減り、いい加減な悪人(?)が増えたように思います。わかりやすく言うと、「騙して売りつけてやろう」が減り、「売れたならあとはどうでもいいや」が増えたということです。
念のために申し上げますが、建築業界の大部分が基本的に誠実な人々によって支えられています。そこのところ誤解なさいませんように。
問題なのはこうした売る側の人々のことではなく、お客さんが騙されやすくなっている、さらには関心があることや都合の良いことだけに耳を貸していることなのです。
今から半世紀くらい前のことは私もよく知りませんが、年配のお客さんや職人さんからお聞きしたことがあります。
当時家を建てるとなるとまずは棟梁と呼ばれる大工さんにお願いしたり、地元の工務店に依頼していました。巨大なハウスメーカーが台頭する以前の地方の話です。そこでは一見ではなく紹介を通して大工・工務店とお客が結びついていたようです。この紹介者がある時は大工・工務店に対する監視・警告を、またある時はお客さんに建物や業者について長所短所を知らせるといった機能を果たしていました。また、この紹介者の顔をつぶしてはならないとの心理が両者に働いていました。結果として紹介者の存在は大工・工務店とお客さん双方にとってその事業(家を建てること)を担保することになったわけです。
今も紹介はありますが、施工業者(住宅メーカー・建設会社)から紹介料という名の謝礼が支払われることによって、紹介者は単なる販促の手助けに過ぎなくなりました。施工業者は紹介だけしてもらってあとは関与してほしくないし、お客さんも業者を教えてもらう以外に関与してほしくないし、紹介者もお金(数十万)をもらった以上、施工業者を悪く言えないし。なんとなく人間関係が踏み込みの浅いものになるのと相まって、紹介は機能しなくなりました。
現在、その機能しなくなった紹介以外にお客さんと施工業者を結びつけるものは、ネットのHPであったり、住宅見学会であったりでしょうか。残念ながら、そこに事業を担保してくれる第三者はいませんね。ある方は、「自分は複数の業者から見積もりを取って吟味しているから大丈夫!」とおっしゃるかもしれませんが、その数にも限度があります。それに同業他社のことを悪く言うのは業界としてタブー視されていますので、問題があっても指摘を受けにくいものです。さらにそうした業者をお客さんは信用するでしょうか。要するに利害関係にある者同士の評価は当てにならないのです。
ではどうすれば良いのでしょうか?
お客さんご自身で頑張るしかありません。…すみません。でも、そうなんです。
お知り合いで、家を建てた方にいろいろお聞きになるのもよいでしょう。そうした方がいないのであれば、打ち合わせの前に可能な限りネットなどで調べ、より具体的な内容を公開している業者を選ばれると良いでしょう。抽象的なことばかり訴えている業者はかなり怪しいですよ。さらに業者を訪ねてからも質問したことに対して、具体的な資料を添えて説明してくれるかどうかも重要です。あと、担当者については第一に約束を守るのかどうかを確認してください。工事中によく起きるトラブルとして、打ち合わせた内容と違うとか、業者の都合で工期が大幅に延びた、ということが挙げられます。その原因のほとんどが担当者の怠慢によることを、中にいた者としてよく知っています。担当者の人間性や能力を見る前に、この人は約束を守る人かどうかをよく見られると良いと思います。それなら2~3回の打ち合わせでわかりますものね。
あとは前述しましたように、ネガティブな事柄もごまかさずに説明してくれるようならある程度信用できますが、打ち合わせ内容の書面化もお忘れなく。
初めのほうで申し上げた、「えっ!」と驚くようなお客さんからの相談事は、施工業者の担当者の言うことを鵜呑みにしたり、感心のあることにしか興味を示さなかったからだと思います。電球や壁・床の汚れの件もおそらく担当者が契約前に軽い感じで「それくらいしますよ」とでも言ったのでしょう。
家は今あるものを買うのではありませんので、多少施工会社の心証が悪くなっても、尋ねることに遠慮しないほうがよいでしょう。面倒な客だと思われても、後々迷惑して文句を言うハメになるよりはずっと良いと思いますよ。
相談を受ける立場で言わせていただきますと、簡単な説明で納得したような返事をされるお客様は聊か不安になります。なかなか納得してくれなくて、こちらも腹を据えてしっかりお話をし、その上でご理解いただいたお客さんのほうが、その後の対応がしやすく成りますので安心です。
そういう意味では、面倒なことを言っても嫌がらない担当者、という判断基準を置いても良いのかもしれません。ちょっと手前味噌な感じですね。すみません。でも試してみる価値はありますよ。それくらい、最近の営業さんは面倒なことを嫌いますので。
最後に建物は完成してから住み始めます(当たり前ですね)。完成までが仕事だと考えている業者は避けたほうが良いですね。そこから10年20年と住み続けるうちに、建物は確実に痛み、劣化していきます。そうした視点も含めた価値観や考え方を共有してくれる業者が望ましいでしょう。それは最初のほうでお話した「御社のアフタ~」の質問をされるとわかりやすいと思います。
新築であれリフォームであれ、住まわれる方にとって良い結果になりますことを願っております。
やっぱり真面目にお話をすると肩が凝りますね。ミケネコも声でも聴いてきます。