さるきちのしっぽ

おサルのおつむでゆる~くお話ししますので、よろしければお付き合いください。

173 ガブリエル戦記6 ~番外編2~

 みなさん、こんにちは。

 

 私はここで懺悔しなければなりません。

 約1か月間、鉄アレイウォーキングをサボっていたことを…。

 いや~、だって寒いし、天気も悪かったじゃないですか~。それに雷さんまでゴロゴロ鳴り始めるし、万一落っこちてきたら大変でしょ。だから、まぁ、サボっていたというよりも、したくてもできなかったっていう感じ…ですね。いや、本当に。

 もっとも、ツイッターを眺めるのを優先したい願望はありましたけどね。あくまで、願望ですよ。毎晩、空を恨めしく眺めていたんですから。いや、本当に。

 でも、罰が当たっちゃって…。ズッ、ズボンが入らない…。年末年始にありがちな暴飲暴食は、今回はそれほどしていません。っていうか途中で胃がおかしくなっちゃいましたから。これは明らかにおてんとうさまからの罰ですね。

 というわけで、今日の私は罰当たり者ですから、偉そうなことは書かず、ガブちゃんのお話の続きを書きます。

f:id:sarukichitail:20210105110219p:plain

 ガブリエル戦記6 ~番外編2~

 

 前回のつづきをお話するね。これは前に住んでいた土地でのお話なんだけど、私と同じトノサマガエルのおじさんが黒い鳥に食べられちゃったところまでお話していたんだよね。このおじさんはとても親切なカエルで、自分の縄張りに私たちカエルになったばっかりの新米ガエルを住まわせてくれた。その上、これから生きていくのに要なことを身振り手振りで教えてくれたんだよね。

 でも、食べられちゃった…。

 あの日、草が生えていないところでの講義だったのが悪かったんだ。確かにペシペシの技は見晴らしが良くないとわかりにくいからね。

 で、その後は教えてくれたり、守ってくれたりするカエルはいなくなっちゃったから、みんなバラバラに生きていくようになっちゃった。そして、間違いなくその数は減っていったんだ。おじさんがいたときからそうだったんだけど、鳥に食べられたり、猫に弄ばれたりしていなくなっちゃう。おじさんは口を酸っぱくして石の下に隠れるように言っていたから、私はそうしてる。石の下なら鳥も猫も手が出せない。この草叢ではどういうわけか木の根元にたくさん石が置いてあるので、土を掘らなくても、石の隙間に入り込むだけでいいんだよね。でも、他の奴らは人間の住処の近くにコケが生えていて、そこでお腹をスリスリするのが気持ちいいのか、よく行くみたい。で、結局帰ってこないんだ。それを厳しく戒めてくれたおじさんはもういないからね。

 石の隙間に隠れているのは、暑さから身を守るのにも適していた。唯一懸念されるのは蛇の襲撃なんだけど、猫がいるから蛇は来ないっておじさんが言ってた。

 朝、小太りな人間(叔父さん、ガブが言ってるから)が木に水をかけるので自然と石の隙間にも雫が落ちてくる。その雫で体を濡らしてから、できるだけ日差しが当たらいように背の高い草の根元を這って歩き、狩場に向かう。この狩場は、草の高さはそれほどでないものの、幹は太いので、バッタを主なターゲットにしている。バッタっていうのはジャンプしてから、基本的に草に幹につかまるみたいだ。その時後ろ脚は大抵ぶらぶらしていて、次のジャンプに備えて後ろ足をセットし直す。この瞬間を逃さず舌を伸ばしてつかみ取り、一気に口の中に入れちゃうんだ。スマートでしょ。獲物にとびかかって噛みつくなんて無粋なマネはトノサマのやることじゃないんだよね。着地した直後の、あるいはまどろみのなかにいる獲物が一瞬でその場から消える。トノサマガエルは一流のスナイパーでありマジシャンなのだ!

 それで、一番好きなのがショウリョウバッタ。大体2㎝前後の個体が一番美味しい。何と言ってものど越しがいい。あいつらはスマートだから、スルッとのどを通っちゃう。他のヤツは頭でっかちだから、口の中で少し砕いてやらないと丸呑みできないんだよね。小さいコオロギなんかはそのままでいいんだけど、トンボなんかはちょっとボディが長いので、二つ折りにして呑んじゃうのがおいしくいただくコツなんだ。ただ、あいつらの頭は硬いから、気分によってそこだけ外に出しちゃう。まぁ、ちょっと贅沢なんだけど、ここは虫が集まってくるので気にしていない。あと、青虫や芋虫はよく食べる。捕まえやすいし、腹持ちもいいからね。でも毛虫は食べない。あの毛が邪魔で食べにくいから。蝶や蛾も食べるんだけど、羽がかさばって食べにくいんだよね。それに変な粉が出てきて口の中がパサパサしちゃうんだ。彼らは幼虫のうちに食べちゃうにかぎるよね。

 普段は小一時間くらいで狩りは終える。私たちは3~4日食べなくても平気だから、雨が降らない日が続くようなら、1日に食べる量はそれほど多くなくても大丈夫なんだ。狩りをしている時は、同時に自分の身を危険にさらしているわけだから、短時間で終えるにかぎる。で、また石の隙間に帰っていくの。まぁ、大体この繰り返し。雨の日はできるだけ石の外には出ないようにしてる。雨が降ると、獲物が圧倒的に少ないからね。確かに鳥や猫もいないんだけど、雨の日は蛇が活発に動くんだ。普段見かけない蛇も、雨で猫がいなくなると、雨で浮かれるアマガエルなんかを狙ってくる。

f:id:sarukichitail:20210105110336p:plain

 そういえば、ちょっと前にヤマカガシが出て人間たちが大騒ぎしていた。

 サーッと降った雨が思いの外早くやんだので、哀れなヤマカガシは逃げ遅れたんだと思う。小太りな人間(あ、またっ!)から食べ物をもらっている猫に見つかったみたいだ。ヤマカガシのヤツ、アマガエルを食べるのに夢中で、人間の住処に思いっきり近づいちゃったみたい。しかもあのコケにお腹をスリスリしていた。蛇も気持ちいいのかな?そのうちあの大嫌いな猫に見つかって、必死に首を振って威嚇してたけど数発のパンチをもらってしまい、一気に形勢は猫に傾いた。そもそもカエルを食べ過ぎたんだよね。ヤマカガシって本当は細長い蛇なのに、お腹のあたりがプックリしちゃってたから、一体どれだけのカエルを食べたんだ!って感じ。だからいつもの動きができなかったのかもしれない。それにいつの間にか土ではなく灰色の硬い地面の上で戦ってたから、完全にアウェイ状態だった。身を隠すことができない状態では、威嚇→逃げる→追ってきたところへカウンターを決めるっていう技が使えない。隠れられては困るから相手は必死に追ってくるのであって、見晴らしの良いところでは逃げるのを落ち着いて追うことができる。切羽詰まって接近戦を挑んだところに逆カウンターパンチを食らって万事休すっていう試合内容だった。

 ぐったりしてしまったヤマカガシを咥えて、得意げな猫の前に例の小太りの人間(もういい!)が現れて、何やらギャーギャー手を振りながら叫んでいた。猫がヤマカガシを放すと、虫の息だったヤマカガシはプルプルしながら必死で逃亡を図り、小太りの人間はますますパニックになっちゃってた。そんなことなら、そのまま猫に持って行かせれば良かったのに…。結局上に赤く光るものを載せて大きな音を鳴らしている箱がやってきて、中から出てきた人間が、もう死んじゃったかもしれないヤマカガシを袋に入れて持って行っちゃった。まぁ、猫が放してから、人間がいっぱい集まってきて、ヤマカガシを棒でつつき回していたからね。なんかドナドナのメロディが聞こえてきた。

 それにしても、人間はパタパタパタパタ動き回る。この草叢を事実上支配している小太りの人間(もう何も言わない)も、朝は木に水を遣り、猫に食べ物を与えに来る。それから明るいうちに何度も出入りしてゴソゴソなんかやってる。そんなに動いていたらお腹が減ってどうにもならないだろうっていつも思うんだよね。

 それに比べて、私は無駄に動かない。動くのは狩場への往復だけで、狩場に着いてからも、擬態化しなきゃいけないので動かない。だから、そんなにお腹が減ったりしない。そして、狩る獲物も必要最小限なんだ。なんかエコでしょ。

 まぁ、こんな感じで平穏な日々が続いてたんだけど、やがて運命の日がやってきた。

 長くなっちゃったから、このお話は次回にさせてね。

 別に書くのが疲れちゃったからじゃないよ!って言ってるヤツがいるけど、気にしなくていいからね。

f:id:sarukichitail:20201029125405p:plain

 つづく