さるきちのしっぽ

おサルのおつむでゆる~くお話ししますので、よろしければお付き合いください。

185 ガブリエル戦記7 ~番外編3~

 みなさん、こんにちは。

 

 昨夜、ぼんやりと空を眺めていたらオリオン座を見つけました。

 久しぶりに雲一つない夜空だったからでしょう。

 私はなぜかわかりませんが、あの砂時計みたいな星座が好きで、毎年冬になると車の乗り降りの度に眺めています。とても落ち着きますからね。

 星座を構成している星々はそれぞれ地球からの距離はバラバラです。それが夜空に並ぶと何やら意味ありげな形に見えるのはとても不思議です。でも、どの星も色や明るさが違います。ひょっとするとそれがいいんでしょうね。考えてみれば、オリオン座の星々が同じ色、同じ明るさだったら興ざめもいいところです。

 自然が生み出す造形美、その圧倒的な存在感は有無を言わさぬ説得力がありますが、それは一つとして同じものがないにも関わらず、絶妙なバランスで結合している奇跡的な現象のせいかもしれません。

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 我々の社会もそうあってほしいものです。

 さて、今回はガブリエルが以前住んでいた土地を離れるきっかけになった事件の前段階のお話です。このお話は「58 ガブリエル戦記1 ~彷徨編~」につながります。

 よろしければ、そちらもチラッと見ていただけると嬉しいです。

 

 ガブリエル戦記7 ~番外編3~

 

 運命の日って言うとかっこいいんだけど、ぶっちゃげた話、いつもの小太りな人間(叔父さん、ガブが…)ではなく、デブ人間(あっ、こいつ私のことを…)が草刈りをしたために、この土地を離れることになったってことなんだよね。

 夜は日が当たらないから体の表面の水分が奪われることはない。そういう意味では安心なんだけど、蒸し暑くって体がふやけちゃいそうなんだよね。ムシムシして体のまわりの空気の中に水分がたくさんあって、前足を振ってみるだけでべちゃべちゃになりそうな感じ。あまり気持ちのいいものじゃない。だから、夜の間はいつもの石の隙間に入り込み、さらに軽く穴を掘ってその中にいるの。じめじめしてるけど、土はひんやりしてるから、こっちのほうが気持ちいい。

 本来なら、夜のほうが明かりに集まる小さな虫を捕まえるチャンスなんだけど、猫のヤツが出てくるし、昼間きちんと食べてるから夜は寝てる。なんとなくカエルっぽくない生活のリズムなんだけど、もう慣れちゃった。まず生きること、これが最優先だから、カエルらしさなんて体裁は気にしないことにしてる。

 前の日に雨が降っていたので、石の隙間のねぐらは湿地状態だった。周りの水は熱を持ってしまってるので快適とは言えない。もうちょっと冷たいほうが好みなんだよね。

 朝日が昇ってしばらくすると、日が当たって周りの空気がジリジリし始める。そんな日は必ず小太りな人間(ガブ…)が木に水を遣るから、その根元の石にも自然とたくさん水がかかる。おかげで、しばらくの間ひんやりを再度楽しめるんだ。あの小太りの人間(…)は案外いいヤツなのかもしれない。たまに目が合っても私には何の興味も示さないし、水をかけてくれるし、猫に食べ物を与えるから、必要以上に猫のヤツも我々を追っかけてこない。人間は猫や蛇や鳥よりも絶対強いはずなんだけど、我々に興味がないんだとしたら、人間の縄張りの中に住むのが安全なのかもって思うようになっていた。

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 さて、程よくひんやりを楽しんだ後は狩りの時間だ。

 我々は食って寝ることに1日を費やす。他のことなんてしない。…別に興味ないし、バタバタ動き回るとお腹がすいちゃうからね。狩り場に着いたらひたすら待ちの態勢になる。なかなか虫が現れない時は半日そのままっていうこともある。でも全然苦にならない。あの小太りの人間(おいっ…)はなんかセカセカ忙しそうに動き回っているんだけど、敵に襲われる心配がないからあんな行動がとれるんだよね。我々は襲う側でもあるけど襲われる側でもあるから、下手に動くと捕食者の目に留まっちゃうんだ。一応いろいろな意味があってこんなふうにしているの。怠けてるわけじゃないんだよ。

 今日はバッタの通り道で待ち構えることにしよう。

 バッタは細長くて薄い草の葉をよく食べるんだけど、草が密集しているところにはあまりいない。密集した草の中に入っちゃうと飛べないからね。あいつらは羽まで持ってるから、一旦飛び上がると遠くまで飛べるんだけど、チョコマカと歩くのは得意じゃないんだ。だから、危険がせまったらすぐに飛び立てるように、まばらに生えた草や、密集した草叢ならその端っこのあたりに陣取って草を食べてる。さっき通り道って言ったけど、それはバッタってずっと同じ草にしがみついていないんだ。まだ食べるところがたくさんあるくせに、別の草に飛び移る。それが彼らの生き抜く術なんだろうけど、その生態まで知り尽くした私のような知的(?)なトノサマガエルにかかれば、かえってその習性を利用されちゃうんだよね。

 で、さっそく密集した草の端っこからちょっとだけ中に入ったあたりの太い草の幹にしがみついてみた。すると草の枝につかまったまま死んでしまったトノサマバッタを発見!あ、死んだ虫は食べないよ。食べるヤツもいるみたいだけど、お腹壊したら嫌だから食べない。それよりもこれを目当てにコオロギやトノサマバッタが来るかもしれない。餌に釣られた時ほど不用心な時はないからね。ということで擬態化してみたら、さっそくコオロギがやってきた。

 コオロギにしてもバッタにしてもジャンプするときはかっこいいんだけど、着地するときは何とも無様なんだ。前足と中足(?)で必死にしがみつく感じ。この時後ろ足は宙ぶらりんなことが多いので、連続して飛べないんだよね。それに羽があるから、一旦それを畳む時間も必要なんだ。だからその瞬間を狙うのが一番効率がいい。案の定そのコオロギもバッタの死骸の近くに着地した。そもそも獲物に直接しがみつくことなんてないんだよね。大概その近くに着地してノソノソ歩いて獲物に取りつくんだ。予想通りの位置に予想通りの形で着地してしまったコオロギに、スナイパーと化した私から逃れられるものではない。着地と同時に襲い掛かる私の舌がヤツのボディをガッチリキャッチ!そのまま口の中へリターン!う~ん、まずまずの味。まぁ、準備体操にはちょうどいい相手だ。さて、お次の獲物は何かな?と思っていたら、けたたましい音がしてきた。

 石の隙間で寝ている時にも聞いたことがある音だった。あの時は「うるせえな!何時だと思ってやがる!」って思ったものだけど、石の外で直にその音を聞くと、とても我慢できるものじゃなかった。いったい何が起きているのかと、草を登ってみると、デブ人間(ガブ~!)が棒みたいなものを振っていた。ただ事じゃない。

 そういえば以前トノサマガエルのおじさんがデカい音がする時は絶対に外に出ちゃダメだって言ってたような…。それがこの事だったのか。でも、今はねぐらの石から離れちゃってるし、どうしたものかと思案に暮れていたら、周囲がザワザワし始めた。デブ人間(ガブ!覚えとけよ!)に追っ払われた虫やらカエルやらがこっちに逃げてきた。こんなにいっぱいいたんだなぁ、なんてのんきなことを考えていたら、食べごろなショウリョウバッタを発見!ファ~美味そう~!…それにしてもショウリョウバッタっていったいどうなってのかな?えっ、あ、いや、目がすごく上のほうにあって、口はかなり下の方なんだよね。あの間にはなにがあるんだろう?脳ミソ?えっ、そんなにいっぱいあるの?たぶん脳ミソはあの目の上の尖がってるところにちょっとあるだけだと思う。だってアイツ、バカなんだもん。でもね、とっても美味しいの。のど越し最高だし。

 よ~し、お次はあいつを…って思っていたら、すぐ近くまでデブ(人間を付けろ!)が…。

 この先のお話は以前書いたので、今回のお話はここまでってデブ(…)が言ってます。

 次回はどんなお話になるのかについて、デブ(…)はまだ考えてないみたい。

 でも、そのうち書かせるから、待っててね。

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 ちなみに、私たちトノサマガエルって食べるでしょ、寝るでしょ、で、また食べるでしょ、この繰り返し。おかげで体は大きくなったんだけど、なにか一つ忘れているような気がするんだよね。なんか、こう、モヤモヤするの。おじさんは教えてくれる前に食べられちゃったし、デブ(クソッ)は「ガブが大人になったらわかることだから」なって言ってはぐらかしてばかりなんだ。

 だから、もしよかったら、誰か教えて!

 なんかモヤモヤして仕方がないの。

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