さるきちのしっぽ

おサルのおつむでゆる~くお話ししますので、よろしければお付き合いください。

㊶油断していました。

 みなさん、こんにちは。

 

 涼しくなり、防波堤で釣り糸を垂らしていても汗をかかなくなってきました。

 それはそれで大変結構なことなのですが、先日釣りをした時に、十数年の付き合いだったタモを失いました。ク~、悔やんでも悔やみきれません。

 その日は時折強い風が吹く変わった天気でした。シーンとしていたところから、急にビューッと吹きます。この繰り返し。まぁ、気を付けていれば大丈夫だったと思いますが、悲劇は起きてしまいました。

 その防波堤はよく行く港のもので、外側が1.5mくらい高くなっているタイプです。

 私は防波堤先端の内側で釣りをしていました。いつもの付け餌処分の釣りです。

 前回、フグとはいえ1時間あまりで結構数が釣れたのに味を占めて再びやってきたわけです。始めるときは「今日も楽しませてもらうぜ!」ってな感じで全く緊張感のない状態。まぁ、緊張しながら釣りをすることなんてあまりありませんし。

 その日携帯していたタモは長さ7.2mの柄に最近交換したばかりの玉網(50㎝)を装着したものでした。なぜそんなに長いのかというと、家から近くにある防波堤は海面から高いことが多くて、5m前後のよくある長さの柄では届かないからです。それで贖ったもので、別に高価なものではありませんでした。いつものとおり、こういうものにあまりお金をかけません。

 しかし、そのタモは付き合いが長く、安かった故に少々重いのが気になりましたが、安かった故に乱暴な扱いをしても、一度も私の期待を裏切ることなくスムーズな伸びちじみをしてくれました。半年くらい前には港でちょっとした段差に気づかずコケてしまった私を身を挺して守ってくれました。正確に言うと左手に持っていたこのタモを体より先に地面に打ち付けることで、ケガをせずに済んだんですけど。そのため玉網が歪んでしまって新調する運びとなったわけです。

 それほど私を大切に思っていてくれた(?)タモを、何も気にせず防波堤の高い部分の壁に立てかけて置いてしまったのです。

 時折吹き付ける風は、その日使っていた4.5mの竿を曲げるくらい強いものでした。でもすぐやんじゃいます。油断していました。それにあの重いタモが、この程度の風でどうにかされてしまうとは思ってもいませんでした。

 前回と違い、なかなかアタリが出ない状態。時折吹く強風が糸を乱すので、仕掛けがうまく馴染まず「やりにくいなぁ」と思っていたところ、竿先に微かなアタリ!仕掛けが入り切っていないので、糸が引っ張られて竿先にアタリが出た模様。ウム!としたり顔で竿をあおったときまたもや突風が!竿を下向きにして堪えていたら、横からガラガラと音が聞こえ、見ればゆっくりとタモが防波堤先端に向けて倒れていくところでした。「おい、なにしてんの?」などとのんきなことを言っていたら、玉網と柄の半分くらいが海側へ身を投げ出したような状況。そして柄尻が上に上がりそのまま海の中へ。…あの時柄尻を足で踏んでおけばよかったのですが、「ふぇ」なんて妙な声を出すのが精いっぱいで不覚にも見送ってしまったのでした。海に落ちてからのタモはこれまでの付き合いに対して何も未練がないかのようにあっけなく沈んでしまいました。水深もあるため、暫くしてから救助を試みましたが結局断念しました。

 ちなみに、その時釣れた魚はアジでした。アジはアジでも全長3㎝弱の過去最少のアジ。「お前のせいで~!」と危うく八つ当たりするところでしたが、かろうじて思い止まりリリースしました。濡れ衣を着せられそうになったアジは、暫く気絶していましたが、その後意識が戻ったのかきびきびとした動きでその場を後にしました。

 救助を断念した時点で、やる気がなくなり釣りは終了しました。

 さらば、私のタモ!十年以上ありがとう…くぅっ。

 久しぶりに凹みました。体も重いし、気も思い。

 長い付き合いだった道具がなくなってしまうと、喪失感が強くていけませんね。

 こういう時は包丁を研ぐことにしています。

 

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 あれこれと考えたところでどうにもならないことがあります。

 そういう時は、無心になれることをするのが一番ですが、私にとってそれは釣りだったわけで、その釣りをしていてショックな出来事があると「さてどうしたものか」となってしまいます。そこで包丁を研ぐわけです。言うまでもなく刃物ですから、注意力が散漫な状態で扱うとケガをします。ですから、ちょっとだけ真剣です。さらに、きちんと研がないとかえって切れなくなってしまいますので、やっぱり真剣にやります。

 私の砥石は粒度800と6000の砥石が背中合わせになっています。

 粗目のほうで研いでから仕上げに移りますが、最近研ぎ応えといいますか、刃の先がピタッと砥石にあたっている感覚をようやくつかめるようになりました。そうなってくると長くゴリゴリしなくても研ぎあがるようですので、楽になりました。いずれにしても、作業の成果がすぐに確認できるのは精神衛生上良いことだと思っています。

 包丁は三徳、出刃、刺身と三種類です。なぜか三徳包丁が一番よく切れるのですが、私の三徳包丁は切刃の部分に穴が開いています。これは切ったものが包丁にくっつかないための工夫ですが、豆腐など柔らかいものを切った時にかえって引っ掛かるようで、ちょっと不満があります。この包丁はかれこれ二十年くらい使っていますので、そろそろ第二線に退いていただこうと思っています。ずいぶん小さくなりましたし。

 仕事柄、カンナの刃やノミの刃を研ぐことがありますが、包丁を研ぐときは刃が大きいせいか独特の緊張感が漂います。あ。決して危険な感じではありませんよ。カンナやノミの刃を研ぐときっていうのは、木を削っている時に切れ味が悪いと感じ、必要に駆られてやっているのであって、包丁の場合はなにか、こう、狩猟民族の血が騒ぐというか、…やっぱり不謹慎ですね。

 ただ、そうこうしているうちに研ぎ終わりましたら、早速広告紙か何かで切れ味をチェックします。切れ味が悪いと、不機嫌になって研ぎを再開します。きれいに刃が入り、スーッと切れたときは、おそらく良くないことを考えている時の顔をしているんじゃないかと思いますが、とても良い気持ちになります。

 特に刺身包丁を研いで、スーッとなってしまったら、…いけません、いけません。

 

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 みなさんもぜひ気分転換に包丁を研いでみませんか。

 きっとすっきりしますよ。

 気を付けるのはケガですが、これはすべての動作をゆっくり行うことで、ある程度予防できます。

 それに、刃物はゆっくり研いだほうが厳かで雰囲気が出ますしね。フッフッフ。

 …すみません、タモの件で少し頭がおかしくなってしまったのかもしれません。