さるきちのしっぽ

おサルのおつむでゆる~くお話ししますので、よろしければお付き合いください。

118 釣りと牛猫

 みなさん、こんにちは。

 

 風が強い日が続いていましたが、少し穏やかになったので、釣りに行きました。

 今回はチヌ狙いで、少し水深のある防波堤に行きました。

 撒き餌もきちんと用意して、付け餌も3種類用意して、うむうむ、準備万端ですね。

 ここは防波堤の先端になり。水深も8mくらいあります。なかなか水温が下がらないので、こういう深めのポイントならば、ちょっと大きいのが釣れるんじゃないかと思い、やって来ました。風はほとんどなく、強いて言えば東風で、私の方から沖に向かって吹いています。これは好都合。向かい風で軽い仕掛けを扱うのは大変ですからね。

 いつものようにタモの確認をしてから、撒き餌を混ぜ始めます。が、その前に軽く一服。チヌ釣りは所謂朝まずめ夕まずめでなくても釣れますので(もちろん早朝や夜の方がいいんですが)、無理せず9時頃からのスタートです。最近朝は寒いので、これくらいの時間から始めるのが良いのです。

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 そういえば、釣りの前日は雨でしたので、程よく水が濁っていました。この濁りは大切で、水上の様子がわからないから、魚の警戒レベルが少し下がります。潮はほとんど動きませんが、まずまずの状況なので、これはひょっとすると…ウヘヘヘ、と捕らぬ狸の皮算用をしながら、タバコを吸い殻入れに入れて準備をしました。

 こういう風がなく潮も動かない時はおもりを使わない方がいいのですが、生憎小魚が群れで撒き餌を待っているようだったので、とりあえずBのおもりにBのウキでやってみることにしました。竿は0,6号の飛竜チヌを使ってみます。名前がいいんです。

 撒き餌をしてみると小魚は防波堤から沖には出ようとしないので、彼らを足止めするために1杯撒き餌を足下に打ち、仕掛けは10mくらい沖に投げて撒き餌を打ちました。

 少しずつ気温が上がってきたようで、体がポカポカしてきました。今日は漁もお休みなのか、港には漁船が泊めてありました。港と言っても小さな漁港なので、人もまばらで、のんびりとした良い雰囲気でした。

 餌を針につけて1投目は何度やっても緊張します。あ、別にあがって震えているわけではありませんよ。1投目は「いきなり大物が来たらどうしよう」という言葉とは裏腹に大きな期待をしています。それでいて、「最初に大きいのを釣ってしまったらおもしろくない」とか「アタリがなかったら縁起が悪い」とか、とにかくいろんなことを考えてしまうんです。ですから、1投目は緊張するのです。

 潮が小潮であまり動かないせいか、仕掛けの馴染みに時間がかかりましたが、どうやら底まで到達したようです。ポイントに到着してから、竿を左手に持ちウキを眺めているこの態勢になるまで15分くらいかかりました。ふかせ釣りはやたらと準備に時間がかかります。撒き餌を混ぜて、ひしゃくに10杯くらい撒き、様子を見ます。潮はどう動いているのか、餌取はどうか、等々確認してから、竿にリールを付け仕掛けを作ります。仕掛けができたら、針におもりを付けて水深を測ります。これらをやってから、ようやく針に餌を付けるわけです。でも、これも楽しいんだから仕方がありません。

で、1投目は見事に空振りでした。餌を取られちゃったんですね。ウキがピコピコしていたので、つつかれてるなぁと思っていたらその通りでした。「あ~、あっちにも餌取がいるのか。でも底の方にいるならなんとかなるな」と一人なので遠慮なく達人の気分になっていました。ふかせ釣りで一番嫌なのは、狙っている水深に餌が到達する前に取られちゃうことなので、底にいる餌取ならまだ大丈夫なのです。それらの餌取は大きな魚がやってきたら、それを恐れて散ってしまいますから。

 遠くで鳴いている分には可愛く思えるカモメやウミネコの声を心地よく耳にしながら、2投目、3投目と手返しよく仕掛けを打ち込んでいきます。相変わらず底付近に餌が着いてからウキに反応が出ます。まぁ、焦ることはないか、と10回くらい手返ししたところで休憩しました。撒き餌は撒き続けます。

小型の漁船が1隻帰ってきました。小さな港で、入口も狭いので、漁師さんの顔も良く見えます。目が合ったので、帽子をとって挨拶したら、ニコニコしながら手を振ってくれました。こういうのもいいんですよね。

 ふぁ~とまったりしていたら、後ろから猫の鳴き声が聞こえてきました。

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 振り返ると、5mくらい距離をとって白黒の猫(私は牛猫と呼んでいます)が体はこっちに向けて、顔は横に向けて座っていました。痩せていて、ところどころ毛が抜けていました。要するに貧相な牛猫だったんですね。憐みの心半分、近づいてこないから可愛くないのが半分といった気分で眺めていましたが、こういうふうに一定の距離を取りながら、こっちの様子を窺うヤツには慣れていますので、無視することにしました。

 こういう猫は叔父の飼っている3匹でじゅうぶんですからね。

 やれやれと思い、釣り再開です。

 ふと思いつき、針をかえて再開してみることにしました。餌取が何かを知りたくなったんですね。チヌ針の2号から1号へ変えてみました。うまくいくとデンボ(ウマヅラハギのこと)が釣れるかもしれません。で、やってみると底付近でウキにアタリがありました。が、私はチッと舌打ちしちゃいました。ウキはスーッと沈みましたが、ちょい揺れながら、言い換えればウキの浮力を何とか引っ張り込んでいるような感じでした。こういうアタリの時は大抵小魚です。まぁ、飲み込まれても嫌なので、上げてみると10㎝ちょいのベラでした。キュウセンともいう黄色っぽくって派手なヤツです。

 魚が上がると、後ろからミャ~ミャ~言い始めました。振り向くとさっきより近づいていました。食べない魚は逃がすことにしているので、ちょっとためらいましたが、牛猫に魚をやることにしました。〆てからやれば良かったのですが、うっかり生きたまま与えたので、はじめは飛び跳ねる魚を持て余しているようでしたが、数発猫パンチを打ち込んだあとビシッと前足で魚を抑え込みぐったりしたところで咥えてどこかへ行っちゃいました。やれやれですが、これで釣りに集中でします。

2匹目は5分もたたないうちに釣れましたが、これまた10㎝くらいぼっか(カサゴ)でした。すると、また後ろからミャ~ミャ~鳴きます。さっきの牛猫でした。あれっ、もう食べちゃったの?とちょっと不審に思ったので、今度は魚を与えず、海に逃がしました。ぼっか(カサゴ)は美味しい魚ですが、成長が遅いので、できるだけ逃がすようにしています。それに頭が大きいので、よほどの大きさにならないと、食べるところがありません。私が魚を海に投げたのを視て、牛猫はどこかへ行くのだろうと思っていましたが、その場に寝そべり持久戦の構えをとってきました。

 「お前、プロだな!」と私。プロというのは、港に生息し釣り人や漁師からのおこぼれで生計を立てている猫のことです。あえてプロの称号を与えるのは、彼らは無駄なことをしないからです。魚をねだる時は、文字通り猫なで声を出して愛想を振りまきますが、魚をゲットしたらサービスは終了です。あと、必要以上に人間に近づきません。あくまで野生としての矜持を失っていないこともプロとして重要な点なのです。

 ただ、どうして不審に思ったのかというと、猫はそんなに早く食べることはできないはずだと思ったからです。

 そこで、次にまたベラが釣れたので、与えてみると同じようにして咥えて行きました。これで満足しただろうと思っていたら、しばらくしてまたトボトボ戻っときました。なんて欲張りなヤツでしょう。プリプリしながら釣りを続けていると、10㎝に満たない魚が釣れました。その魚を見た瞬間、私の中の悪魔の手先としての黒い感情が湧き上がってきました。

 釣れた魚はハオコゼという魚で、見た目はぼっか(カサゴ)に似ていますが、背びれの節というか骨というか棒の部分が長くそこに毒があります。人間もそれに刺されると熱がでます。コイツに刺された日にはお前も一巻の終わりだな、とニヤニヤしながら牛猫を見ると、嬉しそうに目を輝かせているではありませんか。うっ、あっ、だめだ!私にはできない!!とこの後牛猫に訪れる苦痛を考えてしまい、この悪の計画は頓挫してしまいました。魚ばさみでハオコゼを海に逃がすと、牛猫はまた寝そべって持久戦に入りました。次はぼっか(カサゴ)が釣れたとしても、ヤツに与えてやろうと思っていたら10㎝くらいのアジが釣れましたので、そのまま与えました。牛猫は嬉しそうに咥えて行きましたが、気になったので後を追いかけてみました。そもそも猫が獲物をため込むなんて聞いたことがありません。どうしてすぐに戻ってくるのか知りたかったんですね。すると、案の定、他の猫に奪われていました。それも3匹で同時に襲ってくるのでどうにもなりません。牛猫は威嚇されただけで魚を放し、ちょっと離れたところで横取り猫が持ち去るのを眺めていました。その後踵を返しこっちへ歩き始めたところに私がいたものですから、ちょっとバツが悪かったんでしょう。ミャ~ミャ~鳴きながら私の釣り座の後ろの定位置まで歩き、そこに寝そべりました。

 私はというと、なんと不憫なヤツだろうって感じになってしまい、もういけません。こうなったら、あの憎たらしい横取り猫どもが来なくなるまで魚を与え続けてやる!と気合十分な状態で釣りに臨むことになってしまいました。

 幸いアジの群れがいたのでしょう。小さいのですがポツリポツリと釣れるのでどんどん与えました。5匹くらい与えたところで、戻ってこなくなったので、もういいかなと思い、針を2号に戻して小物をよけるようにしたところ、小アジなどは釣れなくなりました。まぁ、こんなもんよ、と一人納得しながらやっていると、次の魚もアジでしたが25㎝はありそうでした。やはりいいことをするといいことがあるなぁ、なんて思っていると後ろから例の鳴き声が。…え、いたの。

 このサイズなら持って帰りたいんだよねぇ、と呟いてはみたものの、また、ヤツの目を見てはダメだ!と思っていながらも、すべては牛猫の思惑通りになりました。それまで与えていた魚よりちょっと大きいので、〆てから与えてやりました。

 まぁ、やるからには最後までやり遂げなければなりません。

 ちょっと重いのか、何度も地面に落としながらヨタヨタと歩いていく牛猫を見送りながら、足りなければまた来い!と軽く声をかけてやりました。

 その後はカレイ(35㎝くらい)とアコウ(キジハタ35㎝くらい)が1匹ずつ釣れました。釣れる度に恐る恐る後ろを振り返っていたのは、我ながらバカみたいでしたが、まぁ、いいじゃありませんか。

 結局チヌは釣れず、外道の五目釣りになっちゃいましたが、なかなか良い釣りでした。

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 帰宅後、カレイとアコウを下処理して冷蔵庫に納めようとしたところ、冷蔵庫内のミケネコが「待ってたよ~」といったものですから、「お前もか!」と真剣に答えてしまいました。その後、1時間くらい真剣に自己嫌悪に陥っちゃいました。