さるきちのしっぽ

おサルのおつむでゆる~くお話ししますので、よろしければお付き合いください。

66 う~ん、ビデオ判定

 みなさん、こんにちは。

 

 MLBドジャースワールドシリーズを制覇しましたね。

 あとアメリカのスポーツで楽しみなのは来年のスーパーボウルくらいでしょうか。

 スポーツが制限付きであっても再開されてきたのは、本当にうれしいことです。

 日本でも野球やサッカーなど徐々に元に戻ってくれたようでホッとしています。

 スポーツ観戦は本当に楽しいですよね。どっちが勝つ、どのチームや誰が優勝するって予想はするんですけど、なかなかそうならない。予想が当たっても、その経緯は予想外の事が起きたりする。ハラハラドキドキしながら、とても楽しい時間を過ごし、ゲームが終わった後もその余韻を楽しめます。さらにラグビーワールドカップのように大きな感動を味わうことだってできます。いやぁ、本当にスポーツっていいですね。

 

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 でも、私はひねくれものなので、ちょっと問題提起をさせていただこうと思います。

 テニスなどでチャレンジ制度ってありますよね。審判の判定に対して確認をすることができる制度です。テニスではCGで表示されますし、他の協議では映像を見直して確認します。これによって判定が覆ることがあります。結構数多くあります。

 こういうのをビデオ判定と言っているようですが(ビッビデオ?古っ)、現在様々なスポーツで取り入れられています。そして、この傾向はますます強くなると思われます。

 はたして、これっていい傾向なんでしょうか?

 私が学生の頃やっていたテニスは、トッププロの試合に限り、かなり早い段階で判定に機械を導入していました。主にサーブの判定でしたが、サービスラインに限ってセンサーを使っていました。フォルトの時にピーッて鳴っていたのを今も覚えています。その学生の頃、1度だけプロテニスの大会があって、と言ってもランキング100位以下の選手たちですが、その時に審判とボールパーソンとして動員されました。私は運よくボールパーソンでしたが、線審をした人たちは実に気の毒でした。だってわからないんですもの。特にサーブが。

 いくら100位以下の選手と言っても、200㎞/h近いスピードのボールがINなのかOUTなのかなんて訓練を受けていないとわかりません。グランドスラム等大きな大会の審判はきちんと訓練を受けています。こういう感じで跳ねたのはINこういうのはOUTって経験的にわかるようになっています。まぁ、それでも誤審はかなりあります。それで早い段階でセンサー導入となったんですが、ある時そのセンサーの判定に主審がオーバーコール(判定を主審が改めること)をかけました。確かUSオープンのビランデルVSレンドルの試合ったと思います。レンドルのサーブでピーッと鳴りましたが、主審はINに改めました。当然ビランデルは納得いかないので抗議しました。その時彼は「人間が判定できないから機械を使っているのだろう。それなのにその判定を人間が覆すのなら機械なんか使わなければいい」と言ったようです。その通りだと思います。

 しかし、結局判定は主審の裁定のままでしたし、ビランデルもそれ以上食い下がることはありませんでした。このビランデルっていう人はあまり抗議をしない人でした。

 今ではホークアイっていう技術を使い、ボールの軌跡を瞬時に解析してCG化します。これによって、正確な判定が得られるようになりましたが、あくまで選手が要求した時だけ使用しています。効果として誤審が改められるようになったということで、誤審がなくなったわけではありません。これ大事です。

 誤審は増えてもいないし減ってもいません。ただ、確認することができるようになったことと、確認したうえで間違っていた場合は改めることができるようになったということです。ということは一旦審判が判定しますよね。でも、その後確認されて覆ってしまうかもしれない。これは審判にはとんでもないストレスがかかります。さらに1試合の中で複数回そういうことがあると、その審判の精神状態はどうなっちゃうんでしょうか。私ならとりあえず逃げちゃいます。はい、迷わず逃げます。堪えられません。

 あのう、これは間違いないと思うんですが、このままビデオ判定が進むと審判のジャッジ能力は低下すると思います。それはストレスからではなく、むしろストレスを感じなくなったあたりから、ジャッジが適当なものになっていくように思うんです。だって、「おかしいと思うんならチャレンジすればいいだろっ!」っていう人が現れてもおかしくないですからね。選手だって人間の判定なんて言うあやふやなものよりも、機械で正確にジャッジしてくれれば良い、となるのかもしれません。観客は…ちょっとわかりません。試合の流れが止まって、冷めちゃう人もいるかもしれませんね。

 野球とかアメフトのように1プレイする度に一旦ストップする競技はまだ良いのですが、サッカーのように流れが大切な競技は判定の確認の度にプレイを長く止めると、見ていてイライラしちゃいます。

 う~ん、ビデオ判定をどの程度、どのような形で導入するのかについては、慎重に進めたほうが良さそうですね。

 審判の役目は判定することだけでなく、試合が円滑に進むようにその秩序を維持することもあります。それができないと、大荒れの試合になり、感動もへったくれもあったものじゃありません。でも、選手にしてみれば、判定を機械に頼らざるを得ない審判に敬意をもって従うでしょうか。実際テニスにおいて、審判に対する暴言や不服従が最近増えてきたように思います。女子のウィリアムズさんなんか最近よく荒れています。審判だけでは持て余してしまうのでスーパーバイザーまで出てきて宥める始末です。

 ビデオ判定の行きつく先が審判の軽視に繋がってしまうと、その競技自体が成立しなくなります。そういう意味でも慎重であるべきです。

 上の方で、観客についてはわかりません、としましたが、ちょっと思うんですけど、ハイテクを駆使して疑いようのない正確な判定が当たり前になったとして、…なんか寂しくないですか?初めに申し上げたようにスポーツ観戦はプレイ中と試合終了後の余韻の両方が楽しめます。観戦後、一杯やりながら、ああでもないこうでもないと偉そうに試合を振り返るのもファンの特権です。話の中には当然「あの判定はおかしい」とか「審判は何を見ていたんだ」なんて言うのもあるでしょう。負けた側は特に。つまり、応援している選手やチームの敗北をどこか違うところに原因があると思いたい気持ちはわかります。それが、判定にはなんら間違いがないとなると、敗北を真正面から認めなければならなくなります。少なくとも責任を擦り付けられる別の原因の一つはなくなってしまいます。まぁ、褒められたことではないのでいいんですけど、スポーツ観戦はそういうところが少しあっても良いような気もしています。

 だから、ほどほどが良いと思っているのです。

 ビデオ判定についてだらだらとネガティブな話をしてきましたが、一つ良い点があります。たぶん、間違っていないと思います。

 それは故意の誤審、つまり八百長判定を防止できるという点です。

 私が覚えているなかで一番ひどい誤審は日韓共同開催のサッカーワールドカップです。具体的には韓国VSイタリア戦、韓国VSスペイン戦ですね。特に韓国VSイタリア戦はひどかった。でも、当時は主審が絶対でしたから、どうにもなりませんでした。今なら第4の審判やモニターでチェックしていることもありますので、そう簡単にあんなジャッジはできません。他の競技にしてもそうです。問題の判定について、その都度スタジアムの大型スクリーンに映像が出されてしまうと誤魔化しようがありませんからね。

 技術の進歩により正確な判定が得られるようになったことが、あくまでスポーツの良さを消さないよう、丁度良いところで折り合いをつけてくれると良いのですが。

 

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 誤審と言えばシドニー五輪の柔道での篠原選手の件がありましたね。

 その誤審よりも、その後の篠原選手のコメントは本当に立派でした。

 誤審は時として選手の人生も変えてしまう程の破壊力を持っていますが、それに打ち勝つのもやはり選手の心構えしかないんだろうなぁってつくづく思い知った件でした。

 その後TVで活躍している篠原さんを見たときに「あの時感動して流した私の涙を返せ!」と言いたくなりましたが、篠原さんおもしろいから、まぁいいです。