みなさん、こんにちは。
家電販売店はやはりいいですね。
実に楽しいです。暫く行っていなかったので、いろいろと新しい商品を物色してきました。以前はデジタル家電ばかり見ていましたが、最近は白物家電もおもしろいです。特にフードプロセッサーや炊飯器はなかなかの品揃え。っていうか10万円を超える炊飯器が何種類もあるのには驚きました。誰が買うんでしょう。また、炊飯だけでなく、煮物もできる圧力鍋を見つけたときは「ふぉわー」と声を上げてしまいました。
ほ、欲しい。
あと、これだけスマホが普及しているにもかかわらず、いまだに電子辞書が十数種類あったのには別の意味で驚きました。これって売れるのかしらん？っていう感じ。
あ、私が行く店はエディオンです。デオデオの頃から通販以外はここで買っていました。自称デオラーです。
この日は結局折り畳み式踏み台を買って帰りました。あのプラスチックでできているヤツです。…トイレを借りたので、何も買わないわけにもいかず、仕方なく…です。
さて、久しぶりに変な人のお話です。
前回は東さんのお話でしたが、今日は谷口さん（仮称）のお話をします。
年のころは東さんと同じくらいの還暦前で、ちょこっと渋めのマスクをしています。俳優の高倉健を50倍に薄めて、変な機械で圧縮しなおした感じ。うまく言えませんが、昔のいい男の片鱗を覗かせることもありそうなマスクです。…まぁ、いいでしょう。
で、この谷口さんなんですが、やっぱり善悪の境界線が曖昧で、酒を我慢できない人でした。この人の場合は昼食の時に飲みます。やっぱりビールです。夏はご丁寧にもそのためだけに小型のクーラーボックスを持ってきます。性格でしょうか、自動販売機で買うような危ない橋はわたりません（自販機がないかもしれないから）。しっかり500mlをご持参されます。その代わりお弁当はなく、どこかで買うか、食べに行くか、していたようです。？？意味が分かりません。弁当を買うのならそこでビールも買えばいいし、食べに行くのならそこで飲めばいいはずです。（仕事中なのでいいはずありませんが）
しかし、谷口さんは万が一の飲みっぱぐれを恐れたようです。
ああ、谷口さんはそうまでしてその1本が飲みたいのか、と変な感心の仕方をしていました。
ところが、ある日部長と会社近くの定食屋へ行ったところ、谷口さん発見！「ん？カウンターの上の中ジョッキは谷口さんの？」って聞かなくてもいいことを聞いてしまい、谷口さんは肘でジョッキを自分から離すように押しながら、ママさんに「しゃげて！（おそらく下げて！の意味）」とぼそぼそ言っていました。すると部長が私に向かって「余計なことを言うな！」と言わんばかりの一瞥をくれてから、優しく谷口さんの肩に手を添え「ええよ、ええよ。ワシャ見んかったことにするけん。その代わり明日も来てくれにゃあいけんよ」囁いていました。
そうです。谷口さんには登校拒否ならぬ出社拒否癖があったのです。
朝、出社したらその日はまじめに仕事をします。この人は配達や軽作業の他、ブロックやレンガを積むことができます。仕事を途中で投げ出すことはありません。でも、前日嫌なことがあったりすると、翌日会社に来ません。その日のうちに何かあったのなら言ってくれたほうが良いのですが、それはしません。ですから、朝会社に行きたくない時に前日のことを理由にして休んでいると、部長をはじめ会社のみんなは睨んでいます。
子供みたいな人です。
でも、昔はそんなことはなかったそうで、これは部長から聞いたのですが、私が入社する前のことです。毎週月曜日だけは朝礼をしました。その時に社長が「3分間スピーチ」なるものを社員にさせたそうです。前日までにあったことを何でもいいからみんなの前で3分間話す、というもので特に珍しいことでもなく、どこの会社でもやっていそうなことでした。私なら5分10分と話し続けて顰蹙を買いそうなものですが、現業のおじ様たちはこういうのがめっぽう苦手でした。東さんなどは3分話さなければならないところを15秒で終わらせたそうです。
で、谷口さんに3分間スピーチの当番の日がやって来ました。
開口一番「ボクは・・・」直立不動でやや上のほうに視点を定め、その後何も声を発することがない谷口さん。そこで空気が読めない社長が「タニさん、頑張ってよ！」
「・・・」さすがの東さんも唾を飲み込むばかりで何もできません。みんなもこれを一体どうしろと言うんだ、っていう感じで困惑していました。仕方なく部長が「はい、タニさんお疲れ！おわりおわり」と強引に朝礼を終わらせてしまいました。
その日一日真面目に働いた谷口さんは翌日から3日間休んだそうです。
谷口さんがちょこちょこ休むようになったのは、この件がきっかけだったようです。
3分間スピーチもそれ以来やらなくなったそうです。
まぁ、おおらかな時代だったと言えばそうだったのでしょう。
ちなみに、谷口さんの口癖は「コッチンコッチンする」でした。…未だに正確な意味がわかりませんが、夕方事務所に帰ってくると必ず「ふぁー、今日もコッチンコッチンしてきたぁ」と言っていました。たぶん現場作業のことをコッチンコッチンと言っているのだろうと思い、帰ってきた谷口さんが言う前に「あ、タニさん、コッチンコッチンお疲れ様でした」と言ったところ、「バカにするな！」と叱られちゃいました。その後、なぜか東さんからも叱られ、とどめに部長からもお小言を頂戴しました。その時の部長のセリフは今も覚えています。
「明日タニさんが来てくれんかったらどうしてくれるんや！」
いや、子供じゃないんだから…。言えませんでしたけど。
